グッドタイムバッドタイムの前奏はこうだ
東庁舎として使うから、前のS工業の残骸すべて捨てろと命令をもらったのがまだ9年前。
S工業が消滅するのは大体社長の性格から分かっていたけど、終わる悲しみを自分も感じて、泣きながら片づけをした。社長が死んだ後の社屋の片付けはかなりしんどい。盛者必滅である。
「モトパン、ジミーペイジのギター教えてやるよ」遊んでもらった社長の声が聞こえてくるような会社の廃墟で拾ったのが「ブルース入門」と言う雑誌だった。形見としてその本を清掃センターの持っていこうとするトラックの荷台から拾ったのがまだつい「こないだ」のことである。
今日さんざん世話になった東庁舎の片付けをした。国民文化祭の記録、色々な団体に配り用事のすんだよしい小唄のCDの原盤など懐かしい品物をほこりをかぶった棚から引き出しゴミとして片付けた。
「おい片付ける品物についてオレにも何か言わせろよ」とS社長が空から声をかけていた午前であった。
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